平成20年11月5日 社会新報(社会民主党全国連合機関紙)


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キラリ!☆ひと
「官製過労」の違法性間う裁判を起こした
浅野 哲さん ●あさの・てつ

   自分ひとりの問題じゃない
 「今まで死のうと思ったことは一度もありません。でも、無意識に駅のホームから線路を見下ろし、駅員に引っ張られたことがあります」
 はっとわれに返った瞬間を振りかえるのは、淺野哲(32歳)さんだ。大学院修了後入社した褐嚼ン技術研究所で年間4000時間の労働を強いられ、深刻なうつ病状態になっていた頃のエピソードである。
 01年に入社、長時間過重労働でうつ状態になり、2度倒れる。05年12月に出社困難のため休職を申し出たが認められず、重責解雇された。07年3月に会社を相手取って未払い賃金の支払いと解雇無効、長時間労働への賠償など約1300万円の支払いを求める訴えを大阪地裁に起こした。「長時間労働の強制」自体が違法だと賠償を求めたのがポイントである。

淺野さんは、国土交通省が発注する河川整備計画策定業務の治水部門を担当していた。淺野さんの過労は、いってみれば"官製過労"だ。褐嚼ン技術研究所は、旧建設省の財団法人を分離民営化したもので、仕事はほとんど国土交通省から受ける公共事業だ。年間4000時間労働の"民営化残酷物語"とも言えるのではないか。
 建設業界全般に過重労働は増加しており、監督機関で発注機関でもある国交省にも責任があるはずである。
 「約40人の部署で3年間に6人の若手が辞めました。うち4人は精神疾患や白律神経失調症を発症したんです。私ひとりの問題じゃない。なんとしても裁判を頑張りたい」と淺野さんの決意は固い。

 (ジャーナリスト・林克明
 原告HP http://5982.biz


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